セブ島−潜って食べて−

高尾広明

2.ダイブ1

私がダイビングのライセンスを取ったのは1995年12月、バリ島ででした。その後、グレートバリアリーフ、モルディブ等で潜っています、と言うと、ダイブ好きを想像するかもしれませんが、実は、ライセンス取得後、潜ったのは10回程度、この10年は全く潜っておらず、ダイブ好きとはほど遠いと言うのが実際です。

大体、ダイビングと言うのは面倒くさいのです。あのびしょびしょに濡れたウェットスーツを着るのですが、脱ぎ着しにくいし、とても気持ちが悪い。時間をかけて支度をし、船に揺られてスポットまで行っても、水中に居られるのはせいぜい1時間、終った後はシャワーを浴びずには居られません。スキーも面倒ではありますが、びしょ濡れにはならないし、一度支度をすれば、丸一日楽しめます。

ダイビングは命にかかわるので、自己責任で全てを行うと言う原則があります。機材のセットアップ、着脱、操作、後始末は自分でやらなくてはいけません。開始前のセットアップが終るとそれをダイブスポットまで行く船まで自分で運ぶのが原則です。エアータンクはアルミ製だそうですが、これがやたら重い。これを担いで岩だらけの海岸を10〜20m先に泊めてある船まで歩いていくとなると、途中で転んで水深1mの海で空気の入ったタンクにつぶされて溺れること必定であります。ちなみに船を使わず、スポットによっては海岸から歩いて水に入っていくのですが、この場合、数10m歩く場合もあり、重さに耐えかねて、水辺に着く前にぱったりと倒れます。

そうなるとダイブショップも立ち行かなくなるので、多くのダイブショップでは特に日本人向けには殿様ダイブと称するサービスを提供しています。そういう本来自分でやらなくてはいけない事をメイトなどと称するショップのスタッフが、代わりにやってくれるわけです。殿様にも大名から小旗本まであり、大名だと、装置の準備は勿論、運搬から、船上での着脱まで手伝ってくれます。しかしA君は筋金入りのダイバーですので、彼の使うダイブショップは自己責任を貫いており、基本的に全て自分でやらなくてはいけません。しかし、今回、私は懸命に腰痛を訴え、やっと、装備を船とショップの間運ぶ小旗本のサービスだけは許してもらいました。

A君は近くにゴルフ場があると伝えてきていましたので、今回のセブ滞在では、私としては、ゴルフ中心を考えていました。そのため、シューズは勿論、ゴルフバッグも担いで行きました。ダイブを数本やるにしても、残りはシュノーケルです。しかし、度々の懇願にもかかわらず、A君はゴルフには連れて行ってくれません。寝る時を除いてほとんどA君の寄生虫状態だった私としては、ダイブをやらざるをえなかった訳です。

ダイブ好きの人の中毒度合いはゴルフ以上で、私の滞在中、ポーランドから来たマーガレット、ドイツから来たダニエル、ノバートといつも一緒でしたが、彼らは船の出る時間になると毎回淡々として集まってきては、嬉々としてびしょ濡れの服に着替えていました。
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