28.老館長の一念(1) 祭りのあと
 今回の舞台は、奈良市のあやめ池と私の勤務先の大学になる。先日物故されたローマ法王もわずかだが登場する。関係者のなかには存命の方もおり、さしさわりのある部分も含むと思われるので登場人物はおもに匿名表示を使いたい。

  昨年の6月に近鉄直営のあやめ池遊園地が閉園した。通常の遊園地施設に加えてプール(冬はスケート場)、それから阪急宝塚の向こうを張った少女歌劇団や円形劇場などがあり、ここ近辺の幼稚園児や小学生は必ず遠足に来るところだ。私も、まだ小さかった頃の子供たちを連れて一家行楽じみた行事を実施した覚えがある。奈良で育った者にはなじみ深いところだろう。私でいうと谷津遊園というところか。

 だから、なぜ閉園したかに説明の要はない。TDLと谷津遊園の関係をUSJとあやめ池に置き換えればいい。加えて無配を続けている近鉄の経営能力ももちろん関与している。バンザイしたのはバファローズだけではないのである。

 この遊園地は私の通勤路線である近鉄奈良線の西大寺から難波に向って次の駅、「菖蒲池」の改札出口北側20メートルのところに入園口があった。駅自体が小高いところにあるので、電車内から園内がかなり見渡せた。遠足の子供の一団と乗り合わせると、車内で本は読めなかった。貴重な予習の時間なので恨みがある。

 最近電車で通過するたびに、派手な色の観覧車やコーヒーカップなどが解体撤去され、更地にされていく。祭りのあとの光景はうら寂しい。

 電車の駅には駅名標とならんで、名所案内のボードがよくある。近隣の施設や社寺を数件表示しているのだが、この駅はもちろん「あやめ池遊園地 北0.2キロ」というのが筆頭だった。そして最下段に「東洋民俗博物館 北西0.5キロ」と書かれていた。作成しなおすのだろうか、閉園とともにボードはすべて空白になった。ところが先日、通過する(普通しか停車しない)ホームに目をやっていると「東洋民俗博物館」だけが復活している。

 おや、博物館はまだあるのか、館長は6,7年前に104歳で亡くなられたと新聞に出ていたが・・・・そして、これから書くようにこの博物館は館長なしには存在しないはずのものだが・・・・大近鉄の名所案内にそもそも記載されるべきものなのか(昔から不思議に思っていたが)・・・・近鉄が出資しているのだろうか・・・などなどあれこれの疑問が押し寄せてくる。そしてここが物語の出発点である。次回はうってかわって大学である。(つづく)
 
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