南ドイツ ランツフートでの生活

ドイツからの近況報告 3

西田 高

1.今のランツフート(Landshut)

早いものでこちらに赴任してもう2年が経過しています。そろそろ3回目の冬を迎えるところです。

ここ数日急に冷え込んで気温も零度を下回り、朝は霜が降りていました。
今月末まで夏時間を採用しているため、最近は朝起きたときは、まだ空が白み始めた程度です。もうすぐ「帰宅するときにまずフロントガラスの霜かきをしてから」という生活が始まります。

2.ランツフートの位置と気候

現在私が生活しているのは南ドイツのバイエルン(Bayern)州の中央近くのランツフート(Landshut)という町です。
皆さんの良く知っているミュンヘン (Muenchen)の東北東80kmのところに位置しています。
南ドイツといっても緯度的にはずいぶん北の方で北緯49度(樺太の中央くらいだと思います。アメリカとカナダの国境がやはり49度です。)にあたります。この関係で夏は日が長く、夏時間のせいもあり、夏至のころは午後10時頃まで明るさが残っています。反対に冬は極端に日が短くなり、冬至のころには、星が瞬いているうちに会社に着き、星が瞬き始めてから会社を出るという生活になります。

夏は30℃を越すこともありますが、湿度が低く大変清々しい気候です。日本でいうと高原の気候に近いのではないでしょうか。
冬の冷え込みは厳しく、最低気温は零下20℃を下回ることもあります。数年前には零下30℃を下回ったことがあったそうです。

3.ドイツ運転事情

ただ雪は少なく、例年はうっすらと雪化粧になる程度です。しかし冷え込みが厳しいため少しの雪でも凍結してスリップ事故につながることが多いようです。
昨冬、雪の後、赤信号で停止していたら、路面の傾斜で車が徐々に横滑りしたことがありました。ただ普通は雪が降ると、ただちに除雪車が出て、除雪した後に塩と砂利を撒いていきますので町中での運転はほとんど問題はありません。

車の運転というと、ドイツのアウトバーンが日本でも有名だと思います。
基本的には制限速度が無く(勿論カーブの急なところ、路面状態の良くない場合、車線幅の狭いところでは制限がつきます)、ほとんどの車は140-160km/hrで走行しています。その間を縫って80-100km/hrぐらいでトラック、バス、250km/hr以上でスポーツカーや一部高級車が走行しています。
したがって相対速度が非常に大きいので運転には案外気を遣います。追い越し車線に入ったときは半分以上バックミラーを見ています。ほんの少し、前ばかり見ているといつのまにか、すぐ後ろにポルシェがいてパッシングを掛けられることもあります。
また片側一車線の田舎道でも制限速度は100km/hrです。実際の走行速度は 120km/hr程度のことが多く、遅いトラック等を追い越すときは対向車線の車に余程気を付けないと、この場合もあっという間に正面衝突ということになりかねません。

交通ルールは速度制限と右側通行ということを除けば基本的には日本と同じです。
日本と若干違うのは車間距離を余り取らないことで、推奨は100km/hrで40m、町中の50km制限のところで15mぐらいですが、ほとんどの人がその半分も取っていません。それ以外の運転マナーは圧倒的にドイツの方が良いと思います。
特に日本と違い大型トラックの運転手のマナーの良さはびっくりするほどです。

4.ドイツの商店

ドイツは日常生活の中にキリスト教の影響が強く現れています。安息日の日曜日には通常の商店はすべてお休みです。
ガソリンスタンドの自動洗車機も止まってしまいます。
商店の営業時間は閉店法という連邦政府の法律で規定されれており、平日8時まで、土曜日が4時までの営業です。これは製造業の労働時間短縮が進むのに反して小売業従事者の労働時間短縮が進まないために制定されたそうです。
それでも一昨年緩和されたのですが、それまでは平日6時土曜日は正午までだったそうです。この営業時間の制約に捕らわれないのは一部観光地の商店とガソリンスタンドくらいです。
必要最小限の日用必需品はガソリンスタンドで売っています。もっともガソリンスタンドもアウトバーンを除くと10時頃には閉まってしまいます。こんなわけで、私の場合も土曜の午前中は基本的に買い物でつぶれてしまいます。いつでも24時間営業のコンビニのある日本での生活の便利さが改めて感じられます。

5.ドイツの物価水準

物価は一般的にいって日用品は日本に比べて安く、それ以外のものは日本に比べて大分高いという印象です。したがって、贅沢をしなければ生活費は案外安く上がります。
例えば肉は豚肉も牛肉も1キロ10-30マルク(600-2000円)程度です。勿論牛肉は日本のものとは比較できません。
野菜の類もずいぶん沢山買ったつもりでも全部合せて500-600程度で済むことが多いです。
電気製品はほぼ日本の2倍、車はほぼ同額、ガソリンはやはり日本の2倍といった印象です。家具等は日本に比べて平均的には高いかもしれません。
ただ、親子代々受け継いで使っていくという形になっており日本のように新婚家庭ですべて新しく買い揃えるという事は少ないようです。

それ以外では公営のプール(温泉・サウナ付き)が一日で一人1000円、一家族で2000円、コンサートやバレー、オペラの公演が日本での1/3から1/5程度といったところでしょうか。
日本ではこういった類の催しにいったことのない私ですが、こちらでは何回かオペラ、バレーの公演を観にいきました。
ミュンヘンの国立劇場でオペラの場合で100-200マルク、バレーの場合は50-80マルク程度出せばかなりいい席で鑑賞できます。

6.ドイツのゴルフ、スポーツ事情

ゴルフも休日で80-100マルク程度で出来ますが、この金額でもドイツ人にとっては高すぎるようで余り盛んではありません。逆にいえば予約無でいってもほとんど問題なくプレーできます。ただ、距離が長いのと比較的起伏があり、バッグは自分で担ぐか、手引きカートになるため、案外いい運動になります。期間は4月中旬から10月一杯くらいまでで、それ以外は気温が低く誰もやらないためゴルフ場が閉鎖になってしまいます。

こちらの一は冬はもっぱらウィンタースポーツをしています。近くの池が凍ればそこでミニホッケーやカーリングちょっと足を伸ばせば距離スキー。
ゲレンデスキーの場合は車で1時間半も走れば冬季オリンピックの舞台にもなったインスブルックのアスピリンスノーの上でスキーが出来るようです。リフトも空いているそうです。
残念ながら私スキーをやりませんのでどういう状況かは良くは判りません。ともかくスキーの好きな人にとっては天国のようです。

7.ランツフートの歴史と周囲の観光施設

現在私がいるランツフートという町は13世紀頃にローマの植民地があったところにバイエルンの王様が町の周囲に城壁を築き、歴史が始まったようです。
その後15世紀までバイエルンの首都だったわけですが、15世紀に王家の内紛でミュンヘンと戦争になりこれに負けて首都はミュンヘンに移ったそうです。

人口は6万程度の小さな田舎町ですが、ニーダーバイエルンという日本でいうと郡の中心になっており、いろいろな行政機関が集中しています。
こんな田舎町ですので大戦での空襲も受けず、中世の町並みがそのまま残っており、とてもきれいな町です。

町の中心は小高い丘の上にある昔の王様のお城と130mの高さの煉瓦積みの塔がある教会です。煉瓦積みでは世界で一番高い建物だそうで、1380年に建て始めて、1500年頃に完成したそうです。
町の真ん中をアルプスの麓に源を発しているイザール川が流れています。この川を80kmほど溯るとミュンヘンの町があります。下流に下っていくと100km余りでドナウ川に合流し、ヨーロッパの各国を流れてウクライナで黒海に注いでいるそうです。

ドイツにはこういった中世の面影を強く残す町があちこちにあり、本当におとぎばなしに出てくる町のような感じです。
ディズニーランドのシンデレラ城(或いは眠り姫のお城)のモデルになったノイシュバンシュタイン城もバイエルンにあり、ここからは車で2時間ほどです。
日本から来たお客さんのほとんどの方が希望されますので、私今までに6-7回行きました。
ここからですと、ミュンヘンまでが1時間弱、音楽祭で有名なザルツブルグ迄が約2時間、ウィーンまでで4時間程のドライブで行く事が出来ます。
チェコのプラハまでは3時間半ほどです。スイスに入るまでも道が空いていれば4時間あれば充分です。最も夏の休暇のシーズンは道が込んで倍以上掛かることもあるようです。

私もこちらに来て2年ほどでチェコ、オーストリー、スイス、イタリア、スロベニア、クロアチア、ハンガリーといった国々に観光に行ってきました。もっともほとんどの旅行は日帰りか精々1泊2泊です。

まだ後1年ぐらいはこちらにいることになると思っています。こちらで格安チケットを手配すると日本からの往復で1300-1700マルク(7-10万程度)で手に入れることが可能です。
ミュンヘンまで来て頂ければ土・日はお付き合い出来る可能性もあります。もしご希望の方があればご連絡ください。

追伸

今年の日蝕はぎりぎりで皆既日蝕を観察することが出来ました。物理的には非常に単純な事象ですが、とても神秘的な感じがしました。


ミュンヘンと周辺地域の案内

ミュンヘンのプチホテル"プチホテル・サマー"のホームページです。ミュンヘン、イザール川、ノイバンシュタイン城などの写真が掲載されています。


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