ミラノ便り

              

長尾 伸一

 今、工作機械の国際見本市でミラノにエキシビターとして来ています。

 もうミラノは晩秋の装いです。朝晩は5℃位まで冷え込んで、ホテルの部屋の窓の下にある鉄製のスチームパイプには熱い蒸気が流れています。

 欧州の秋は日本のようにジワジワ来るのではなく、暑かったと思っていると突然寒くなるようです。それをパドヴァ出身の魅力的かつ有能なセクレタリーのステファーニャ嬢は英語で『Shut』と表現していました。

 南欧で40℃以上の日が何日も続き、エアコンの無い部屋で多くのお年寄りが亡くなった熱暑の今夏も、多くの悲しみや倦怠を閉じ込めて、その扉を『Shut』しました。

 今回は少し美食の秋を堪能すべく、イタリア人に推薦してもらった『ミラノの魚介料理の得意なリストランテ』を4軒ほど巡りました。リストランテはご存知のように、格式、味、価格共にハイレベルの店で、その次がトラットリア、ピッツァリア、最後がバール(これが以外にウマイ)となります。

 確かにお奨めのリストランテは、華やかでウェイターは礼儀正しく、座ると間も無くスプマンテ(イタリアンシャンペン)を注ぎに来る。ここでは『取り合えずビール』はありません。肝心の味ですが、食材は新鮮なのに、塩味が強いのです。大きなオマール海老を一匹使ったスパゲッティも牛のすね肉の煮込みも美味しいのに塩味が舌に残るのですね。

 鱸の塩焼きは身をほぐして大皿に盛って出てきましたが、『これって要するに只の塩焼きだよな〜』。10回以上は来ているイタリアで、未だにヴォーノ(ウマイ!)と言えるのは、ピッツァリアでたまに出会う熱々の『トマトとバジリコのスパゲッティ』におろしたてのパルメジャーノチーズをたっぷりかけたヤツですね。

 でも、イタリアワインはお奨めです。赤も白もトスカーナのワインなんか本当に美味しいし、値段もリストランテでも23ユーロ(約3千円)程度ですからお手頃です。

 最後にイタリアの伊達男について。

 今回の展示会はイタリアの代理店との共催だったので、イタリア人の社員が数名参加しました。

 彼らは皆揃って上背のあるスラリとした体型を、仕立ての良いイタリアンスーツで包み、モレスキーの靴(3〜5万円)を履いて、時計はブルガリ、車はアウディA6やベンツのカブリオレ.....夏はヴァカンスを1ヶ月取り、本当にどうなってるのかコイツラハ....という感じです。

 展示会では、お客と話すよりは遥かに長い時間を、まるでそうすることが仕事のように若い女子社員と話す事に費やし、我々日本人スタッフがジゴロと命名した『ベンツのカブリオレ男』なんかは、夕方になると展示会場まで日替わりでモデルのような女の子がやって来て、イソイソと一緒にお帰りになる。マッタクモー。

 我々はと言えば、夕暮れ迫る頃ホテルへトボトボ帰る道すがら、黒人の露天のおもちゃ売りに『ニーハオ』と呼ばれるのが関の山。

 この違いは何でしょう。矢張り、ユリウス カエサルが中欧まで席捲して、更にはエジプトでクレオパトラを見初めてから5百年後にやっと日本は卑弥呼だ何だって言っているのですから、これは歴史の蓄積の差なのでしょうか?

 千年後の日本人は負けていないかもしれません。ガンバレニッポン!
 見識高い方のご教授を賜りたく思います。                            以上


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