5日目

7月19日(月)うすぐもり
−塩狩峠から天塩川温泉−


(塩狩温泉〜名寄市〜美深町〜天塩川温泉)

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塩狩→名寄→天塩川温泉

5時前に目が覚めた。早起きが習慣になったみたい。
風呂に入り,仕切屋さんを起こさないようにロビーでパッキングをしてから,ヒデバロ号で塩狩駅まで散歩する。ヒデバロ号はホテルの人が玄関の中に入れておいてくれようだ。7時からの朝食の前までには,荷物をヒデバロ号にくくりつけ,すっかり出発の準備をした。朝食後,乾燥バナナとクッキーを少年ライダー隊に1個づつあげて,フロントの女性との写真を撮ってもらった。

フロントの女性と

リーダーさんが見送ってくれた。彼は北海道のあちこちのユースでヘルパーさんをやっているうちにここに就職してしまったらしい。30才くらいのとっても感じのよい人だった。彼「あまりもてなしができなくて,すみません。あんまりおもしろくなかったでしょ。でも,けっこう根強いフアンがいるんですよ。」ボク「いや,楽しかったですよ。いつか,また来ます。」彼「きをつけて。いってらしゃい!」ボク「ありがとう!お世話になりました!」
人生の半ばになって,いくつもの人生が送れるとしたら,あれもこれもと思うことが多くなった。若いうちはあまり迷うことがなかったのに。
塩狩峠は,石狩川水系と天塩川水系の分水嶺である。国道40号線を北へ向かう。
和寒(わっさむ)を通り,士別(しべつ)が過ぎ,遠い山の麓までの道路が続く。

真っ直ぐな道

風連(ふうれん)をぬけ名寄に入る。名寄からは,名寄バイパスは自動車専用道路だし,国道40号線や道道252号線はアップダウンがあるので川沿いの道を行けと塩狩温泉ユースホステルのリーダーさんに教わった。7時半に塩狩峠を出発したので未だ10時過ぎだ。とりあえず名寄駅に行くことにした。しかしなにもなく,Tシャツを着替えて,またすぐ出発した。駅前の道を真っ直ぐ北に行けば,その川沿いの道に出られそうだ。真っ直ぐ行って,ちょっと分からなくなったので,コンビニでビタミン水を買い,道を尋ねた。しかし,そこの女性店員はよく知らなかった。すると,ボクの後ろに並んでいた男の人が「この店の前の道をどこまでも真っ直ぐ行けば行ける。」と教えてくれた。お礼をいい,日陰など全くない道を急ぐ。地図を見ると川を渡ることになっているが,川がない。不安になって道を尋ねようと思うが人がいない。しばらく行くとおじいさんがいたので尋ねるとよく分からない。そこへ先ほどの人が自動車で通りかかり自動車から降りてきて,「もう少し行くと川を渡る。そのままずっと真っ直ぐだ。」と教えてくれた。北海道ではボク達と「真っ直ぐ」の感覚が違う。二人に丁寧にお礼をいい,先を急ぐ。さっきの人の自動車が追い越していく。「ありがとうございました。」と大きな声でいい,お辞儀をする。橋を渡った。その向こうに,また真っ直ぐな道路が続く。その奥の方にポツンとさっきの人の自動車が見える。自動車が止まっている手前に左に行く道路があり,「←美深」となっている。そうか,ここを曲がり損ねないように,停まっていてくれたんだ。右に曲がりながら,「ありがとうございました!」と手を振ると,その人は自動車から飛び出してきて,大きく手を振っている。あの手の振り方は,男のボクにバイバイしているにしては力が入りすぎている。どうやら,道が違うので戻れといっているらしい。近づくと,この道は道道252号線に出てしまう道で,未だずっと真っ直ぐ行くのだと教えてくれた。あまりの親切さに感激し,思わず感謝し,写真を撮ってしまった。

親切な人

そうして,無事,宗谷本線の日新駅(にっしん)から智等駅(ちとう)までの川沿いの道を行くことができた。天塩川と宗谷本線に挟まれた人っ子一人通らない道を鳥の鳴き声を聞きながら進む。天気はいいし,とても満ち足りた気分になる。しばらく行くと橋を渡り,道道252号線にぶつかった。つかの間の別天地はまた現実に変わる。でも,気を取り直して,走りながら乾燥バナナとクッキーを食べ,音楽を聴きながら走る。美深に入ったが休憩するところもないので,そのまま,7km先の「道の駅びふか」まで行くことにした。なんと,12時半に着いてしまった。予定より3時間も早い。トイレに入り,牛乳を飲み,すぐに出発する。今日の宿泊地の天塩川温泉まであと16km足らず。恩根内(おんねない)を過ぎアップダウンがきつくなる。店もない。失敗した。水がない。でも,手前の峠も一気に駆け登り,13時半には宿泊地に到着した。

天塩川温泉

「住民保養センター天塩川温泉」は,きれいな建物である。塩狩温泉でリーダーさんが「あそこはなかなか取れないよ。運がいいよ。」といっていた。さっそく,フロントに行き,チェックインができるか聞いた。OKである。今日の行程はたいして景色はよくなかったが,昼過ぎから温泉でゆっくりできるとは,大変ありがたい。
早速,風呂に入る。泡風呂や露天風呂もあり,すばらしい。でも,昨日と同じく,今日もすごい日焼けで,アッチッチィである。
缶ビールを買って部屋に戻る途中で,入浴休憩の終わったらしい女性ライダーに窓越しに話しかけた。「どこまでいくの。」「稚内のライダーハウスまで。ここから2時間で行くかしら。」「稚内まで130キロ。途中山間部だからちょっと難しいかも知れないな。」「わかった。ありがとう。」「きをつけて。」他人の無事を願うようになった自分が不思議だ。
ビールを飲みながら部屋でくつろいでいると,急にあるアイデアが浮かんだ。明日は150kmを走らなければならないうえに,海岸沿いで向かい風だったりすると最悪だ。少しでも距離を稼いでおきたい。今は14時半。あと30kmくらいは走れる。ここから佐久駅まで約30kmだ。時速20kmで1時間半。時速15kmで2時間だ。フロントで時刻表を調べると佐久発16:44天塩川温泉17:28が最終である。夕食は18時からなので十分だ。明朝は天塩川温泉発8:48に乗れば9:29に佐久に着く。よし,行くぞと15時近くにホテルを飛び出す。飛び出すときにチャリダーらしき人と玄関ですれ違ったが,「こんにちわ!」だけ。もう時速20km以上でなければ帰りの電車に乗れないかも知れない。でも,荷物は積んでいないし,大丈夫だろう。咲来駅(さっくる)の手前までの平坦な道を行き,そこで国道40号線に入る。しかし,しばらくして考えた。川沿いの道とはいえ山間部でけっこうアップダウンがある。パンクしたときやバテタときの対策がない。Uターンした。明日の150kmに備えて十分休養した方が得策かも知れないし,ヒデバロ号を見知らぬ土地に一晩おいておくのもかわいそうだ。
自転車旅行は予定の1割は多く走るというのは,ボクだけだろうか。汗をかいたので,また,風呂に入る。露天風呂には既に2人入っていて,入り口に腰掛けていた人が奧に移り場所を開けてくれた。アッチィ〜。その人はさっき玄関ですれ違った人のようだ。その人に「自転車で来たのですか。」と聞く。朱鞠内湖(しゅまりないこ)をまわり,旭川から来たそうである。ここの裏のキャンプ場にテントを張っているのだが,入浴料が200円のうえ,夕食も安いので食事に来たという。ボクは温泉は好きなのだが,長湯が苦手なのだ。「おさきに。」といってレストランに直行する。生ビールと野菜サラダを注文する。「ぷは〜ッ!」いつも,缶ビールなので生ビールがとってもおいしい。富良野のKさんが「缶ビールはあとにして生ビールを飲みましょう。」といった気持ちが分かる。そこへ,さっき風呂で一緒になったチャリダーさんが「いいですか。」と。一緒にビールを飲んだ。彼はFさんといい,旭川市役所に勤めていて,明日,豊富(とよとみ)まで行くという。札幌市出身で,首都圏で働いていたが北海道で再就職したとのこと。ボクは北海道に友達が6人いるが,彼らに比べて北海道なまりもなく,シティボーイに見える。生ビールを飲み,ワンカップ焼酎を飲み,食事をした。昨日飲まなかったホワイトリキュールがあるので,それを持って彼のテントを表敬訪問することにした。応援隊のYさんやKさんから電話があった。Yさんはエアロビに行く前の時間つぶしか。そういえば,エアロビを今日で1週間やっていない。Kさんは友達と二人でファーム富田に来ていて,夕日を見ているという。目の前のラベンダーその向こうには夕日に輝く十勝岳。うらやましいな。少し酔っぱらった。彼の自転車が油ぎれ起こしているようなので注油をしてあげるということで,19時過ぎに戻る。たっぷり注油したFさんの自転車はたっぷり飲酒したFさんを乗せて帰っていった。なんと,ボクはその後,ざるそばを食べたのである。ラーメン,そば,うどん,パスタなど,めん喰いのボクは,さっきからレストランの十割そばが気になっていたのである。味は,まあまあ。歯触りは,ぼそぼそ。でも,食通にいわせると,十割そばというのはこのようなものだそうである。
たぶん,21時過ぎには就寝。
本日の走行距離は,103kmである。

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