ハワイ

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16 ハワイ 8 遭難 Date:6/9/2004-Wed-6:07:33-PM

ハワイで遭難した。

海でも山でもなく、ましてセスナの操縦でもなく、ホテルの自室のラナイ(ベランダ)で。

夕方近く、サイクリングから帰ってシャワーを浴び、水着兼用のトランクスだけでラナイに出て、お気に入りのMDを聞きながら日光浴がてらバドの缶ビールを2本飲んでくつろいだ。幸せを感じる時間だ。

さて部屋に入るかと思ったら、鍵がかかってしまっていてドアが開かない。
ドアを開けたままでいるとエアコンが動かないので、一休み後冷たい部屋に戻ろうと欲張ったのがいけなかった。
ドアの鍵は針金を太くしたような棒が留め金になっている簡単なもので、ドアを閉めた時にカチリと落ちて鍵がかかってしまった。

勿論、部屋に入れないからフロントに電話もできない。
シングル・ルームだから同室者はいない。
ホテルの20階の独立したラナイで下を見ると足がすくむくらいに高い。
左隣の部屋には人が泊まっている気配がない。5,6階下のラナイにはタオルが干してあるので人は泊まっているんだろうけどいつラナイに出てくるか分からない。
方向違いの隣の部屋は仲間の部屋だけど、ここからはその部屋のラナイは見えない方向だし、仲間はプールか海に行くと言っていたので今はいない。いてもラナイのドアが閉まっていれば声は届かない。
地上のプールには白人の女の子が二人泳いでいる。道路には歩いている人も見える。しかし地上20階からの声は届きそうにない。届いたとしても何を言っているか分からず、ただ手を振っている東洋人のおやじがいると思われるだけだろう。
このまま見える範囲のラナイに人が現れるのを待つしかないのか。人が現れてもこのホテルには我々以外には日本人は泊まっていないので外人になんて声をかけりゃーいいのか。
「ヘルプ!ドア、ノット、オープン」か?
明日、部屋の掃除にホテルのお掃除おばさんが来るまで待たなきゃならないのか。
パンツいっちょの裸ではいくらハワイでもチト寒い。
手旗信号は出来ないし、出来ても英語でなけりゃ通じない。手を振り回しても運動をしていると思われるだろう。

あれこれ必死に事態の打開策を考えつつ縦1.5メートル、横4メートルのラナイでウロウロすること10数分。

腹が立ち、「このやろー!」と、高さが2.5メートルはある引き違いのドアをおもっいきり引っ張ったら左下の一つの角がレールから20pばかり外れた。それ以上は開かない。
壊れてもかまうかと更に引っ張ったが動かない。
クソーこれも駄目か。またウロウロ。

ふと、泥棒は頭が入ればどんな所からでも侵入すると前に聞いたことを思い出した。
底辺20p、高さ50pの三角形の隙間。
頭は入りそうだ。

ラナイに寝そべり、頭を隙間に入れ、そろそろ入る。頭が抜け胸の当たりまできたがここで息が切れた。もう一度呼吸を整え進む。腹の辺りは苦しい。ここで又一休み。ガラスが割れたらほとんど裸の状態だから大怪我しそうでヤバイナーと思いつつ、力を入れて少しずつながら進む。
やっとこ腹をクリアー。ここまでくれば後は一気に抜け出た。

成功!助かったー!

ここで心臓が急に波打ちだし、呼吸が苦しくてゼイゼイいいだす。冷や汗がドット出てきた。
椅子に座り込んだ。
背中の左側が赤くこすれていた。

後は外したドアを元に戻さなければならないが、何度か力一杯揺すったらレールに入って元通りになった。
安ホテルだから造りが安普請で助かった。
アカッパジをかかずにすんだ。

その日の昼飯は中華弁当で、おまけのお神籤みたいなカードに望みは叶うと英語で書いてあった。


25 ハワイ 9 レンタル・ビークルDate:5/23/2005-Mon-9:11:16-AM

ハワイでの乗り物の話

1 オープンカー
まあこれは定番でハワイに行くと誰でも最初はこれに乗りたくなる。
免許は日本の普通免許で良い。
友人がわざわざ国際免許を取って行った。
レンタカー屋に行って国際免許を見せるとカウンターのアメリカ人のおネーさんが英語で免許証を見せろと言っている。友人は国際免許を見せているがどうもそれじゃなさそうで日本の免許証を見せろと言っているらしい。友人は日本の免許証はホテルの金庫の中に大切にしまってきて持ってこなかった。いくらねばってもダメ。友人の負け。
国際免許というのは日本の免許を持っているという証拠になるだけらしい。
いわば日本の免許証の翻訳文と云った程度のものでそれだけでは役に立たない。
我々はホテルに取りに帰った。

オープンカーは一度は良いけど単なる自己満足だけの物。快適でもない。
新婚さん用か。
右側通行だから気も使う。
それにホノルルでは駐車場事情が悪く、自動車は不便で、バスやタクシーを使った方が便利だ。

2 電気自転車
GFがサイクリングしたいと言い出したのでカラカウア大通りの街頭の無料雑誌スタンドからタウン情報誌を取ってきた。

ハワイでは何処に行くのも、何をするにも、何を食べるのもまずはこの情報誌で調べる必要がある。
日本の旅行社でオプショナル・ツアーを頼むのがバカバカしくなる。
たかがラーメンを食べるにしてもクーポンが付くので餃子の半人前がおまけとなり馬鹿にできない。料金10%オフなんて当たり前。

ペラペラめくったらレンタルの電気自転車が目に留まった。
バッテリーとモーターで動く。
日本だと自分でペダルを踏んでいて、電気は補助的に使われるだけだが、これは全く漕がなくとも良いらしい。ペダルを漕げばその分速くなり、バッテリーの消費が少なくなるから走行可能距離は長くなる。
4時間で25ドル。まあまあ。

早速借りた。
日本だと道路交通法上、この電気自転車は原付バイクと同じ扱いで公道を走るには免許が必要でかつヘルメットが必要になる。
どうも杓子定規な感じがする。
自分でペダルを漕げば自転車で免許は要らないが、電気任せなら免許が必要とはおかしくない?
見た目は自転車と変わらず、速度も自転車並のせいぜい20キロメートル。
原付と区別する必要性が全く分からない。

日本に帰ったら、通販雑誌に広告が出ていた。でも公道では使えないと小さく断り書きがあった。こんな物公道で使えなければ意味がないと思う。
売れているのだろうか。

結構快適でペダルを踏むのが馬鹿馬鹿しくなる。でもさすがに坂道ではワッセワッセと漕がないと登らない。極力さぼっていたら最後で罰が当たってバッテリーの余力がなくなりレンタル屋さんまで汗を流しながらペダルを踏んで帰る羽目になった。電気がないと普通の自転車より重い。

ダイヤモンドヘッド・ビーチを見下ろしたり、カハラの高級住宅をキョロキョロ眺めたり、普通の住宅街を走って「へー、こういう家がハワイの普通の家なんだー」と、トロトロ走るのって結構楽しかった。

3 自転車
今度は本物の自転車。
この年は風邪気味で出かけたのでホノルル空港の着陸時の高度を下げているときに耳からの空気抜きがうまくいかず、耳の中がキーンといったままでわざと咳をしようが、くしゃみをしようが、唾を飲み込もうが、どうしても治らず、翌日いっぱい、つまり2日間調子が戻らなかった。
それで1日目、2日目はおとなしくしていた。これではダイビングなんてとんでもない。

3日目になって、去年は電気自転車で楽をしたので、今年は運動のために普通の自転車にするかと思った。ホテルの裏のレンタル屋に普通の自転車はなかった。マウンテン・バイクしかない。
まあそれでも良いかと借り出した。
マウンテン・バイクは初めて乗った。
というか私はギア付きの自転車は3段ギアのママチャリの経験しかない。
16段だか、24段だか分からないがギアがジャラジャラいってどれが最適なのか、楽なのかさっぱり分からない。
大体平らなワイキキでなんでマウンテン・バイクなんだ。
近くのカピオラニ公園に向かったが、やけに重い。どんなギアを選んでも重い。走らない。風邪で体調が悪いせいかと重いながら暫く走った。
そこで気が付いた。後ろのタイアの空気が少なく、タイアがグニョリと潰れている。なーんだ体調のせいじゃないんだ。
ここで直ぐにレンタル屋に戻れば良かったのだけど少し離れてしまったのでまあ良いかと思い休憩しながら公園を一周した。
公園の脇には公営のアラワイ・ゴルフコースがあり、網の外からぼんやりゴルフを眺め、ハワイでならゴルフを再開しても良いかなんてぼんやり考えていた。
さて又走ろうかと自転車に跨ったら後ろのタイアから緑色の液が漏れだしていてペチャンコになっている。
しょうがねーなー。
自転車を押して20分掛かってレンタル屋に戻った。
レンタル屋で自転車を見せると、パンクだから修理代を5ドルよこせと言う。と云うより「5ドル」と言うのしか分からないけど。
「最初から空気が抜けていた。俺のせいじゃない」と言いたいのだけれど相手は日本語が通じない白人のアンちゃんだから、こういう場合英語でなんて言ったらいいのかさっぱり思いつかない。
直ぐに戻らなかった自分が悪いと諦め、仕方なく5ドル払って別のを借りた。
結局楽しくなかった。

4 モペット
マウンテン・バイクの次の日は買い物をして過ごした。ホテルと買い物のショッピング・センターは歩いて片道15分以上は掛かり、これを2往復したのでこの日の運動は充分に足りた。
その次の日、マウンテン・バイクはつまらなかったので今日はモペットにすることにした。
モペットとは昔で云うスクーターですね。ローマの休日のベスパの仲間です。
レンタル屋に行くと例の白人のアンちゃんがいた。
これは日本の普通免許で借りられる。
借りたのは良いがエンジンの調子が今ひとつ。回転が定まらない。
アンちゃんは「エンジンが未だ温まっていないからだ」と英語でしゃべっている。らしい。
借りて表の道路に出ようとしたら案の定エンスト。
ここでエンジンのかけ方を教わっていないことに気が付いた。
アレー、待てよ。どうすりゃーいいのー。マイッタナー。
まごまごしてたらアンちゃんが飛び出して来た。心配していたらしい。何でもかんでも「OK。OK」じゃ済まないな。
ここで「ワン。ツー。スリー」とエンジンのかけ方を教わり、無事に道路に走り出した。
それでも暫く不安で景色の良い所に止めてもエンジンは切らなかった。

20代の後半。このままバイクの風を知らないまま歳を取るのが嫌だと思い、と言って二輪の免許を取る気も起きず、で原付に乗っていたことがある。
上野駅の近くに中古のバイク屋街があると聞き、買い出しに行った。
ビーチボーイズの歌うリトルホンダことモンキーも良いとは思ったがチョット実用性に欠ける気がしてその上のダックスにした。
中古屋で買って自宅目がけて走り出した。バイクに乗ったのは15,6の頃友達の家のホンダのカブをその親に無断で、勿論免許なんかなく乗っただけだから走り方はよく分からない。この時は走り出して直ぐに交差点の曲がり方が分からなくて中古屋に戻って教わった。
このバイクで何度も東京に出かけたが京葉道路は走れないので14号線を走った。のろのろ走ると回りの自動車に迷惑だし、追い越されるのが危なく感じた。交差点では一番前に出る。信号が青に変わるとアクセル全開で走る。
この繰り返し。
市川の八幡辺りだと道が狭く大変だったんですよ。今も全く同じだけれど。

さてホノルルのモペットも全く同じ。アクセル全開。
ハワイの道の舗装は日本より粗く、デコボコが多い。と言うより日本の舗装は世界でも珍しいくらい平らではないだろうか。
それからハワイではヘルメットが要らない。キャップを後ろ向きに被る。ジジイだからチト恥ずかしい。
デコボコ道をアクセル全開で走ると、まるで波に乗っているみたいだ。

5 次
自動車もモペットも日本の普通免許で乗れる。勿論電気自転車やマウンテン・バイクは免許が要らない。
レンタルではモペットの上のバイクとなるとハレーダビットソンになってしまう。ローライダー。
アメリカの本土から遊びに来ている若い連中がドッ、ドッっとえらそうに流しているのよ。
ひょっとしたらアメリカなんて免許制度が甘そうだから日本の普通免許でハーレー借りられないかと思うんだけど無理かね。
と云っても原付しか乗ったことない俺には突然ハーレーではどだい無理とは思うけど。
でもイージーライダーも憧れるよね。


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